今回は、実際に、制作物の中に宗教観点で問題がある表現として
抗議を受けた例を挙げてみたいと思います。
十字架の記事で、その宗教にとって、大切にされているもの、神聖なものを
ネガティブに扱ってはいけないということを書きました。
十字架の記事はこちら→【宗教】十字架は描いちゃいけない?注意が必要な描き方①
では、それは具体的にはいったい、どういうことなのでしょうか?
例を挙げながら、考えてみたいと思います。
イスラム教の経典「コーラン」を侮辱的に扱った例とは?
その宗教をネガティブに扱っている、ととられる例として、
よく挙げられるのは、悪役がその宗教の信者だった、と描くことです。
具体的には、以下のようなニュースが、挙げられます。
「ジョジョ」のアニメに“コーラン” 当該DVDアニメと原作の一部が出荷停止に(参考元サイト:アットマーク・ジョジョ)
上記のサイトに、経緯が詳しく書いてありますが、
アニメDVD「ジョジョの奇妙な冒険」に登場する、主人公最大の敵「Dio」が、
「コーラン」を読んでいたことで、現地のイスラム教徒から、抗議を受け、DVDが出荷停止になりました。
(これはあくまで、アニメだけの話であり、原作では、Dioの読んでいる本はコーランではありません。
何を読んでいるのか、よくわからないように描かれています。)
アニメでは、あくまでそのシーンに現地の雰囲気を持たせるための演出として、
コーランが描かれています。
これは、制作側にまったくそんな意図がなかったとしても、イスラム教徒からすれば、
コーランを読んでいると悪人になる、という大変に悪意あるメッセージであり、イスラム教全体を侮辱している、ということに繋がります。
そもそも文章の転写はしてはいけない
アニメスタッフは、舞台がアラビア語圏であることから、アラビア語を探し
それがコーランであることを認識せずに、転写していました。
しかし、コーランという以前に、これが小説であっても、新聞であっても、
著作権的な観点から言えば、転写はNGです。(著作権が切れている場合は別です)
引用したものが、イスラム教徒にとって、自分たちの一部とも言える、大切な存在だったからこそ
事態がすぐに露見しましたが、
「どうせわからないからいいだろう」という安易な気持ちでの文章の転写は
どの言語であっても、避けるべきだと思います。
文章の改ざんはもっとダメ
ここで注意したいのは、そのままの転写はダメだからと言って、
内容をよく理解しないまま、単語を入れ替えたり、改ざんしたりすることは
絶対、避けたほうがよいでしょう。
改ざんされたあとの内容によっては、その宗教を信じる人にとって
とても攻撃的で、侮辱的な内容になっている可能性もあり、
ともすれば、その制作物の回収や賠償だけでは済まないこともあります。
あまり信心深くない、日本人にとっては、「それくらいいいじゃないか」と
思ってしまうかもしれませんが、
他宗教、他文化のものを扱う場合は、知らず知らずのうちに、他者を酷く傷つけているかもしれない、という自覚を持つ必要があると思います。
終わりに
今回は、実例を挙げて、イスラム圏で注意したいことなどについて考えてみました。
宗教に関するこういったニュースは、今なお後を絶ちません。
今回挙げたニュースのようなことをまた起こさないために
常に他宗教、他文化を尊重する心を忘れずにいたいですね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。