今回はおみくじのお話です。
よくお正月のイラストなどで、おみくじをひいているイラストなどがありますね。
なので、ひょっとしたら、「えっ!おみくじって使っちゃいけないの?」と思った方もいるかもしれません。
厳密には使用の可否についてはケースバイケースです。順番に考えていきましょう。
おみくじってなに?
まずは「おみくじ」について辞書で調べてみます。
“おみ‐くじ【▽御▽御×籤/▽御▽神×籤】 の解説
神仏のお告げを得て吉凶を知るために引く、くじ。”
(出典:デジタル大辞泉 小学館)
このようにおみくじは、辞書で引けば出てくる単語です。
おみくじは一般名詞とも言えるため、使用について一見、何の問題もないように見えます。
では、何に気を付けなくてはいけないのでしょうか?
「おみくじ」は商標として登録されている
おみくじは登録商標です。
商標とは何でしょうか?特許庁のホームページに以下のように書いてあります。
“1.商標とは
商標とは、事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)です。“
(引用サイト:特許庁HP)
ちなみに商標の所有者は、下記のページで調べることができます。
参考元サイト→特許情報プラットフォーム:「おみくじ」で検索
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
「おみくじ」という単語は、人のものなので、勝手に使ったらダメ、ということです。
アップルから販売されている「iPad」、ソニーから販売されている「ウォークマン」と同じ扱いということになります。
つまり「おみくじ」は使ってはダメ?
そのため「おみくじ」は使ってはいけない、と考えてしまう前にチェックするポイントがあります。
それは何の名称として登録されているか?です。
登録商標には必ず、「商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務」の部分に、その商標が、何の商品・サービスの名称としての登録なのかが記載されています。
(同じ商標が、同じ団体によって複数商標登録されている場合もあります)
つまり、名称が被ってしまっても、登録されている商品が異なれば、使っても構わない場合があります。
例えば「おみくじ」がチョコレートの区分で商標登録されていなければ、「おみくじ」というチョコレートを販売しても問題ないということです。
実際、調べてみると「おみくじ」という名前の飲み物やおもちゃなどが、登録されていました。
商標を調べるときは、必ず指定商品・指定役務を確認してみましょう。
では実際は、どの役務で登録されているでしょうか。
特許情報プラットフォームで検索してみると、「おみくじ」という名前で、さまざまな商品・サービスが商標登録されていることがわかります。
そのため使いたい用途である「おみくじ」、つまり「大吉」「凶」などが書かれた吉凶を占うために引く紙として、商標登録されているかどうかを調べます。
すると、宗教法人によって「紙製包装用容器、紙類、文房具類、印刷物、書画、写真」の役務で「おみくじ」が商標登録されていることがわかりました。
つまり、商標上では「おみくじ」という名前の、上記に該当するものを販売すると、権利侵害に該当するということになります。
やっぱり「おみくじ」を描いてはダメということ?
神社などで引くことができる「おみくじ」は商標登録されているため、やっぱり勝手に描いてはいけない。
調べた結果、そう結論づけてしまいそうになりますが、ちょっと待ってください。
そもそも私たちは「おみくじ」を販売したいのでしょうか?
そうではなく、「おみくじ」と書かれたイラストを描きたいだけですよね。
「おみくじ」が商標登録されていることは事実ですが、イラストに描いたりすることは、「おみくじ」という名前の商品を売ることにはなりません。
つまり、イラストにおみくじを描いたことで、権利者から商標侵害であると連絡が来る可能性は限りなく低いということがわかります。
描くときは、何に注意したらいいの?
でも権利侵害に当たらないからといって、何をしてもいいということではないのは、明らかです。
「おみくじ」という単語が、印刷物の区分で商標登録されている以上、イラスト内などで同様の用途で描くのであれば、配慮が必要となります。
では具体的には何に注意したらよいでしょうか?
倫理観点の考え方としては、著作権における建築物の考え方と一緒です。
「おみくじ」が商標登録されているものであることを念頭に入れ、ネガティブな使い方をしないということです。
例えば「おみくじは呪いの紙」といったり「おみくじは破いて使うもの」といったりして、貶める使い方、誤った情報を与える表現は避けたほうがよいでしょう。
よほど極端な表現をしていないのであれば、問題となる可能性は著しく低いと考えられます。
!なお、「おみくじ」は、以下に該当する役務でも商標登録されています。
そのため例えばソーシャルゲームなどで「おみくじ」という名前のガチャを販売することはできません。
“携帯電話機及び携帯電話機用ストラップその他の電気通信機械器具,眼鏡,家庭用テレビゲーム機用プログラム,携帯用液晶画面ゲーム機用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる音楽ファイル,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオデイスク及びビデオテープ,電子出版物,カメラ”
出典:特許情報プラットフォーム
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